釣りで釣果に影響を及ぼす要因は多々ありますが、今回は釣り糸(ライン)選びで重要なファクターとなるラインの太さ(細さ)について取り上げてみたいと思います。
釣り糸を選ぶ時にまず考えるのは釣り糸の種類であり、リールに使用するメインライン(道糸)なのか、ハリスやショックリーダーとして使うのかによって、適切な素材は変わってきます。
その次に釣り糸の太さ・細さ(号数)、すなわち必要な強度について考える必要があります。
初心者のうちは、あまりラインの太さに気を配る必要もなく、ターゲットや釣り方を問わず標準的な号数を使用していれば特に問題はありません。
まずは、基本的な仕掛けや釣り方について学ぶべきことがたくさんあるので、そちらを優先した方が釣果に直結します。
ただし、そのタックルや仕掛けを構成する釣り糸の太さについては、決して大は小を兼ねないということを認識しておく必要があります。
ある程度釣りに慣れ、自分でラインの交換を行ったり、釣り針を結び始めるようになれば、使う釣り糸の太さ選びについてもじっくりと考えてみましょう。
ライン選びで釣果は変わる ~細糸を使うメリット~
大抵の釣りにおいては、太糸を使うよりも細糸を使うことの方に大きなメリットがあります。
当然太い糸に比べて、細い糸では強度が下がり、掛けた魚を捕り逃すリスクは大きくなります。
これは大きなデメリットと考えられますが、それでは細い糸を使うことで得られるメリットとは一体何でしょうか。
細糸を使うことのメリットとデメリットを分けて紹介してみましょう。
魚釣りで細いラインを使うメリット(太糸のデメリット)
リールに巻いておく道糸(メインライン)、仕掛け糸となるハリス(ショックリーダー)を問わず、釣り糸は細ければ細いほど良いと考える人がほとんどでしょう。
これは釣りでは当然のことととして認識されていることですが、細糸を使う事で得られるメリットには以下のようなものがあります。
細糸のメリット
- 空気抵抗を受けにくい
- 波風の影響を受けにくい
- リールに巻ける量が増える
- 魚の警戒を受けにくい
- 潮に合わせ自然を演出できる
- コストが安い
ここでは、6つのメリットを取り上げましたが、最初の3つは主にリールのラインとして使用する際のメリットです。
次の2点は、ハリスやショックリーダーとして使用する際のメリットで、最後は全てのラインに共通したメリットです。
細糸を使う際のメリットは、太糸を使う際のデメリットと表裏一体のものと考えてもらえば結構かと思います。
一点ずつ簡単な説明を加えておきましょう。
細いラインは空気抵抗が少なく、遠投するのに有利
リールには仕掛けを遠くへ飛ばすという重要な役割がありますが、ラインが細いとそれだけ空気抵抗を受ける面積も小さくなるので、キャスティングの飛距離が伸びます。
また、細いラインの方がラインの重さも軽くなるので、これも飛距離を伸ばすために有利に働きます。
近年、細くて軽いPEラインが安価な価格で普及するようになったことで、投げ釣りなど遠投を要する釣りではPEラインが使われるようになりました。
また、軽いルアーを使った釣りにおいても、PEラインを使う事でそれなりの飛距離を出すことが可能です。
もちろんPEを選択する理由には、伸びない特性から生まれる感度の高さなど他の要因も含まれますが、以下での紹介も含めて、ここではあくまでもラインの太さに焦点を絞って説明します。
波や風の影響を軽減し、仕掛けの操作性が高まる
細いラインを使う事で、風の影響や波の影響を軽減できるというメリットがあります。
理由は前述の通り、ラインが風や波に接する面積の大小によるもので、細いラインを使うほど風による糸ふけの影響を小さく抑えることが可能です。
また、波や潮が及ぼす悪影響については、ラインの比重の違いによっても変わりますが、細いラインを使う事で波や潮の影響で仕掛けやリグに悪影響を及ぼすことは少なくなります。
ある程度の負荷のある仕掛けではトラブルが減り、仕掛けの操作性が向上するので、釣りをし易くすることに繋がります。
リールに巻ける糸巻き量が増える
ラインの太さは径の大きさそのもので、細ければ径が小さくなりリールに巻く糸巻き量が増えます。
例えば堤防釣りで一般的に良く使われる2500番程度のスピニングリールで、標準スプールでナイロンラインを巻くケースを例に挙げると、2号で200m、3号で150m、4号なら100m程度の糸巻き量となります。
強度のある2500番のスピニングリールではドラグ力が10kgに及ぶものがあり、5号(強力:9kg)でも十分に使えるのですが、残念ながら4号でも糸巻き量が100m程度なので、遠投を要する釣りでは実用性に欠けます。
糸巻量が少ないと万一高切れ(道糸から切れる)した場合に、その後の釣りを困難にさせることになります。
一般的な堤防釣りでは、120m~150m程度の糸巻き量を確保する方が良く、細糸を使えばより小型のリールでも十分な糸巻き量を確保することが出来ます。
細糸ほど魚の警戒を受けにくい
次は道糸(ライン)ではなく、ハリスやショックリーダーなどの仕掛け糸における細糸のメリットです。
確かに細糸を使う事で、糸が切れて獲物を捕り逃すというリスクは増しますが、それ以前にまず魚をヒットさせねば捕り逃すも何もありません。
仕掛け糸は、今まさに釣ろうとしている魚のすぐ目の前にあるもので、視認しやすい太い糸よりは、少しでも見えにくい細い糸の方が魚の警戒心を高めずにすみます。
魚の視力は決して高いものでは無く、魚に糸が見えているかどうかというのには賛否両論ありますが、海中での釣り糸は、光の反射により、実際の太さより太めに見えると言われます。
ただ、見える見えないに関わらず、総合的に判断すれば、警戒心が高い魚ほど、また同じ魚種でも大物になるほど、細い糸の方が食いが良くなるというのは紛れもない事実です。
まずは魚をヒットさせるという点を重視すれば、太い糸を使うよりも細い糸を使う方が圧倒的に有利です。
細糸ほど潮に合わせて自然を演出できる
もう一点、仕掛け糸のメリットで大きいのが、エサやルアーを潮の流れに合わせやすくなるということです。
エサや擬似餌を潮流に乗せて流していく釣りは多くありますが、本来の自然な流れを演出するのに仕掛け糸の存在はマイナスです。
ハリスやショックリーダーには比重のあるフロロカーボンを使用しますが、釣り針の付いたエサや擬似餌を狙った棚まで届ければ、あとは自然を演出するのが釣果を上げるコツです。
軽いエサに対して、比重の高い太い糸は悪影響を及ぼし、出来るだけ細い糸を使う方が有利です。
前項で紹介した観点と同じで、まずは魚をヒットさせるということを前提に考えれば、ここでも細糸の方にメリットがあると言えるでしょう。
もちろん潮の状況や、狙うポイントによっては、細いことがデメリットとなる場合もありますが、このアタリのことはデメリットの項で紹介しましょう。
細い糸の方がコストが安い
これは、ラインの購入に関する共通事項です。
単純に太ければ太いほど材料費も上がるので、同じ長さのラインを購入するにしても価格は高くなります。
ハリスやリーダーとして細糸を使う方が、単純にコストは安くなると言えます。
ただ、リールに巻く場合は細くなれば、それだけたくさん巻けてしまうので、そのままだとコストメリットは出せません。
必要な長さが決まっているなら、不要な部分は安価な下糸を巻いておくことで、コストメリットを出せるようになります。
魚釣りで細いラインを使うデメリット(太糸のメリット)
細いラインを使うメリット側だけを見れば、細糸は素晴らしいから是非使ってみようという結論になってしまいます。
ただ実際には、細糸では強度の低下以外にもデメリットは存在します。
今度は細糸を使う際のデメリットについて考えてみましょう。
細糸のデメリット
- 強度が弱い
- 劣化が早くなる
- 根ズレや傷に弱い
- 絡みやすくなる
- 糸グセが付きやすい
メリットを説明する際と同じように、デメリットについても一点ずつ簡単な説明を加えておきます。
細いラインの方が強度が弱い
釣り糸の太さに最も関与するファクターは強さであり、細い糸ほど弱いということは周知のことです。
ラインは太さを表す号数毎に販売されていますが、各々の号数は重さの単位であるLb(ポンド)やkg(キログラム)と比例関係にあります。
例えばナイロンラインの4号、PEラインの1号は、16lbs(7.2kg)の強力をもち、ナイロンラインの8号、PEラインの2号は、前者の2倍の強力16lbs(7.2kg)を持ちます。
なお、強度が2倍になってもラインの太さは2倍になる訳ではなく、ナイロンラインの場合は0.33mmから0.47mm、PEラインの場合は0.17mmから0.24mm程度の変化です。
ただし、このわずかとも思える0.1mmの違いが、実釣では様々な点において劇的な変化を及ぼすことは、釣りを経験していけば肌で感じることになります。
細いラインほど劣化は早く寿命は短い
釣り糸は素材を問わず、使っているうちに必ず弱くなっていきます。
これはラインが水を吸ってしまう吸水度合いや、UV(紫外線)に当たり続けることによって劣化が進むためです。
極端に劣化が進むと、ラインの伸びが失われ、少しのショックでブチッと切れるようになります。
劣化防止の処理が施されていない安価なラインほど、劣化するスピードは早いのですが、もう一点、太い糸よりも細い糸の方が劣化しやすいという傾向があります。
使用後の痛みのチェックとメンテナンス(塩抜き)をどこまでキチンと行うかで、ラインの寿命は変わってきますので、細糸を使う時ほどラインの状態に気をつけてやりましょう。
細いラインほど根ズレや傷に弱い
ラインに入る傷の深さは、ラインが太くても細くても同じです。
そう考えると、ラインに傷が入れば、太いラインよりも細いラインの方が、大きなダメージを受けるのは明白です。
道糸に傷が入るケースは地面に置き竿したり、柵に立てかけたりした時に起こりますが、普段から注意していれば回避出来ます。
ただ、根に擦れることが多い釣り方をしていれば、ハリスやショックリーダーに入る傷は避けられません。
細糸を使う時ほど、根ズレによって切れやすくなりますので、傷が入っていないかをチェックしながら釣りをする必要があります。
細い糸ほどハリがなく柔らかいので絡みやすい
これはラインの種類を問わず共通して言えることですが、ラインは細ければ細いほど張り(ハリ)がなくなり、絡みやすくなります。
繊維を編み込んだPEラインは、そもそもハリが少なく柔らかいので、ジグ単のようなほとんど負荷のない仕掛けを扱う際には、ある程度の経験とコツが必要です。
ナイロンやフロロカーボンでも1号以下の細糸になってくれば、ラインが柔らかくなるので、やはり絡みやすくなります。
エサ釣りで言えば胴突き仕掛けなどは特に絡みやすく、細くても出来るだけハリの強いフロロカーボンやエステルラインが使われます。
細い糸ほど糸グセが付きやすい
これは前項と同じような内容になりますが、ラインは細ければ細いほど張り(ハリ)がなくなり、糸グセも付きやすくなります。
糸が細いと弾性力が少なくなるので、折れ曲がりやすくなり、ナイロンやフロロカーボンの場合は元に戻りません。
太糸でも糸グセは付きますが、これはスプールに巻くことによる糸グセなどで、ラインの強度に大きな影響を及ぼしません。
細糸での糸グセは強度や釣果に影響を与えるものなので、糸が絡んでモツレを解いても、糸グセが付いているようなら仕掛けを作りなおした方が良いでしょう。
細糸にはメリットだけでなく、デメリットも多くあるということが分かって頂けたかと思います。
意図的に太い糸を選ぶ方もいれば、太糸を使う方が良い釣り方(オクトパッシングや呑ませ釣りなど)もあります。
細糸が太糸よりも優れているということではなく、それぞれのメリットとデメリットを天秤に掛けて、より適切なラインを選ぶのが正解です。
ただし、一つ覚えておいて欲しいのは、メリットには魚をヒットさせる為の要素が含まれ、デメリットにはラインの扱いの難しさによるものだけです。
ただ強いからという理由で太糸を使っているのであれば、一度立ち止まってみて、その選択が釣果に悪影響を与えていないかという点について考えてみましょう。
強度が強く扱いやすいおすすめの細糸
最後にワンサイズ下げた細糸を使う場合に、おすすめのラインについて紹介しておきたいと思います。
まずは道糸(メインライン)について紹介します。
釣りの入門者や初心者さんが始めに手にするリールの多くはスピニングリールで、取りあえず一通り道具を揃える必要がある方なら、糸付きのリールを購入されるケースが多いですね。
シマノ(SHIMANO) スピニングリール 19 シエナ C3000 3号 150m糸付
最近のリールは安価なエントリーモデルでも、価格を超えた高級感があり、駆動系もシッカリしているので、購入して後悔することがありません。
これまでは、糸付きの場合の道糸と言えばナイロンライン一択でしたが、近年のルアーフィッシング人気も手伝い、最近では最初からPEラインが巻かれたものも多くなりました。
シマノ(SHIMANO) 17 セドナ 2500S PEライン付 (1号-100m) バス ライトショアジギング ワインド エギング向け
通常の波止釣りで求められるライン強度は、ナイロンラインで2.5号か3号、PEラインは0.8号か1号といったところです。
PEラインの場合は、ライトゲームの場合に0.3号程度をメインに使う方もいますが、この場合は汎用性が低くなります。
ただ、いずれにしても、糸付きリールに巻かれたラインは安価なものが使われており、糸癖も付きやすいのでそう長くは保ちません。
釣行の頻度とメンテナンスの有無にもよりますが、遅かれ早かれラインを巻き直す時はやって来ます。
自分のお気に入りのラインが決まっている方は良いのですが、そうでない方は種類があり過ぎて迷いますね。
ここで紹介するものは管理人自身も使っているものですが、自身はタックルにあまりお金を掛けないタイプなので、比較的コスパの高い良質なラインが揃っていると思います。
エサ釣りもルアーも両方やるので、ライン選びの参考までにどうぞ。
【エサ釣りでおすすめの道糸】
昔から変わらず信頼の高い東レの銀鱗最高峰の一品【銀鱗スーパーストロングNEO】ですが、ワンクラス上の強度を誇るので、3号が欲しい方は2.5号を、2.5号の強度を求める方なら2号で間に合います。
ラインの価格もほどほどで、1,500円以下で安売りされるケースも多いので、うまく入手できれば非常にコスパの高い製品です。
視認性を高めたい方には、後継製品のブラックマスターを選択するのも良いと思います(コチラの方が安い時が多い)。
【ルアーでおすすめのメインライン】
細くても強度が高く、比較的安価と三拍子そろったコスパ最強とも言えるPEラインは【ラパラ(Rapala)のラピノヴァX】です。
最近はノーブランドの安価な国産PEラインもたくさん販売されていますが、残念なことに標準規格と比べるとほぼ100%太いです。
良質なラインは長持ちするので、試したことがない方は是非一度このラインを手に取ってみて下さい。
0.6号でも14lbsの強度があり、ナイロンラインの3.5号に匹敵する強度があります。
【エサ釣りでおすすめのハリス】
通常の波止釣りで使うハリスなら、【クレハ(KUREHA)のシーガー グランドマックスFX】の一択です。
強度としなやかさを兼ね備えた最高のパフォーマンスを持つハリスで、この製品は決して安いとは言えません。
釣果に直結するハリスだからこそ、ここは最強の製品をお求めください。
ただし、このハリスを使う場合は、道糸も劣化していないそれなりに強度のあるものを使って下さい。
そうでないと、根掛かりなどした場合に、ハリスが強すぎて道糸から高切れしてしまう恐れがあります。
【ルアーでおすすめのリーダー】
非常に高いコストパフォーマンスと、号数のラインナップの揃えやすさで、【ヤマトヨのフロロショックリーダー】をお勧めします。
正直言うとお勧めする理由にコレといったものはなく、早い段階でこのリーダーと出会い、一流メーカー製のものとの差を感じなかったので、この製品ばかり使うようになったからです。
リーダーについては、傷が入ればすぐにカットし、短くなれば結び直すので、安価な製品の方が助かります。
細めの号数を使用した場合でも、強度が足りないと感じたことはありません。
ここ2年ほどで急に知れ渡り、製品サイトの商品レビューも増えましたが、高評価が示す通り良いリーダーなのだと思います。
【糸巻き器】
ついでに紹介しておくと、キッチリとリールにラインを巻くには、専用の糸巻き器を使用します。
便利グッズの位置付けになるものですが、持っているのといないのとでは利便性だけでなく、巻き具合の仕上がりが変わってきます。
ラインを巻き替える機会が多いアングラーには必須とも言える釣具ですが、メガヒットを記録し釣り人から圧倒的支持を受ける逸品【高速リサイクラー2.0】を紹介しておきます。
1点ずつだけの紹介ですが、以上でおすすめのラインについての紹介も終わります。
狙う獲物や釣り方によって、ラインに対してこだわりを持つ必要性がない場合も多々あります。
ただ、安価なラインは総じてライントラブルも多く、気付いていないだけで実は釣果に悪影響を与えているということも多々あります。
自分の使っているラインに疑問を持ち始めたら、細糸の使用も含めて検討してみてはいかがでしょうか。