これから釣りを始める人が、始めに手にする釣り道具の一つに、リールがあります。
リールは、魚を釣り上げるために必要な道具(タックル)の中心ともいえる存在であり、釣り竿(ロッド)との組み合わせにより、そのパフォーマンスは最大限に発揮されます。
釣具店へ行けば、非常に多くの種類のリールが販売されていますが、狙う魚の違いだけではなく、釣り方や仕掛けに合わせた製品を選ぶ必要があります。
もちろん様々な釣りに対して汎用的な使い方ができるリールも販売されていますが、リールは選び方を誤ると使い勝手が悪いだけでなく、最悪使い物にならないケースもあります。
当サイトでは、海釣りの中でも主に堤防釣りに関して取り上げていますが、ここで使用されるリールのほとんどは、【スピニングリール】と呼ばれるタイプの製品になります。
ここでは、『リールとは?』という釣りの入門者さんや、海釣りを始めたばかりの初心者さんに、リールに対する理解を深めてもらう目的で、スピニングリールを一例に取り上げて、リールの特徴や性能に関する基本知識を紹介します。
リールとは ~スピニングリールの特徴と性能について~
リールとは、道糸やラインと呼ばれる釣り糸を巻いておくための釣り道具です。
リールがなければ、のべ竿のように竿の長さまでの仕掛けしか扱えませんが、リールを使う事で、仕掛けをより遠くへ、より深くへ送り届けることができます。
また、掛けた魚の力が大きすぎて、釣り糸が切れてしまったり、竿が折れてしまうことを防ぐのも、リールの重要な働きの一つです。
リールは、海釣りにはなくてはならない道具ですが、その役割は大きく分けると以下の3点になります。
リールの役割
・仕掛けを飛ばすための糸を巻く
・糸の出し入れで仕掛けを操作
・魚とやり取りして引き寄せる
この3つの役割をこなすために、リールには様々な種類の製品が存在し、各々に異なる特徴と性能が備わっています。
リールは大きく分けると、スピニングリール、両軸リール(ベイトリール、ベイトキャスティングリール)、片軸リール(タイコリール)の3種類に分けられます。
先にも書いたように、一般的な堤防釣りで使用されるリールは、ほとんどがスピニングリールですが、ここではそのスピニングリールについて詳しく紹介します。
それではまず、スピニングリールの見た目の特徴から確認してみましょう。
スピニングリールの構造と外観(各部の名称)
上図はもっとも一般的な、フロントドラグタイプのスピニングリールです。
各部の名称については、記載された通りですが、以下に簡単な説明を加えておきます。
各部の名称
- ボディ
リールをパーツ別に分解した時に、最終的に残る本体部分です。 - ドラグ(ドラグノブ)
ドラグ力を調整するためのつまみ(ネジ)です。 - ローター
糸の出し入れをする際に、スプール周りを回転するパーツです。 - ラインローラー
糸よれを防止しながら、スプールへの糸の出し入れをコントロールするパーツです。 - ベール(ベールアーム)
スプールのラインを、固定あるいはフリーな状態にするパーツです。 - スプール
道糸(ライン)を巻いておくパーツです。 - リールフット
竿のリールシートに、リールを固定する部分です。 - ハンドル
ハンドルを回すことで、糸の出し入れが出来ます。 - ノブ(ハンドルノブ)
ハンドルを回す時に、手で持つ部分です。
リールの性能の違いは、構造的なものから外観(見た目)で判断できるものと、内部に組み込まれたパーツの性能によって決まるものがあります。
同じスピニングリールであっても、3種類のドラグタイプやスプールの種類の違い、ハンドルやノブの形状などは、外観からその特徴を掴むことが出来ます。
まずは、リールの仕様の中でも、最も重要なファクターの一つであるドラグについて紹介しましょう。
ドラグとは ~ドラグの重要性と3つのドラグタイプ~
まずリールの重要な性能(仕様)に、ドラグというものがあります。
通常スピニングリールを使用する時は、順回転(時計回り;ただし、左巻き用は反時計回り)にハンドルを回すことで、スプールに糸を巻き取ることができ、魚を寄せて取り込めます。
ところが、ある一定の負荷が掛かると、ハンドルの動きに関係なく、スプールが逆回転し、糸を送り出す動作を行います。
これによって、タックル全体に大きな負荷が掛かっても、糸が切れたり竿が折れたりすることなく、魚とのやり取りを続けることが可能になります。
この性能をドラグと言い、この時設定する負荷の大きさをドラグ力(kg)と呼びます。
スピニングリールのタイプは、このドラグの構造の違いにより、更に3種類のリールに細分化されます。
ドラグタイプは、上図にように、左から順に【フロントドラグ】、【レバーブレーキ】、【リアドラグ】という3種類に分類されます。
各々のタイプの特徴について、簡単に紹介しておきます。
フロントドラグ
すでに先ほどスピニングリールの部分名称を示した図で紹介しましたが、スプールの上に付いたドラグノブを開閉することで、任意のテンションが掛かればスプールが逆回転して糸が出ていきます。
リールを使わずに保管している間はドラグの調整を緩めておき、釣行の際にその時々の仕掛けの強さ(タックル強度)に応じて、ドラグ力を調整しましょう。
このフロントドラグが最も一般的で、サイズも小型のリールから大型のリールまでラインナップされており、堤防釣りにおいてはあらゆる釣りに対応可能だといって良いでしょう。
レバーブレーキ
レバーに人差し指を掛け、手前に引いて操作することで、ローターの回転を自分でコントロールできるタイプのドラグです。
レバーブレーキに加え、前述のフロントドラグを組み合わせたモデルも多くあります。
主に磯釣りに代表されるフカセ釣りに使われることが多く、柔らかい竿を操作する際に、糸の出し入れをコントロールしながら、竿の弾力を活かす角度を作りやすいという特徴を有しています。
初心者向きとは言えず、ある程度釣りの経験を有する人が使うリールと認識しておいた方が良いでしょう。
リアドラグ
リアドラグのドラグの機能は、フロントドラグと同じです。
違いはドラグノブがリール本体の下に設置されており、魚とのやり取りの最中でもドラグの調整がしやすいというメリットがあります。
ただ、こちらも初心者にはほとんど使用されることがなく、一般的ではありません。
アオリイカの泳がせ釣り用など、限られた一部の釣りにおいて使用されているというのが現状です。
スプールの種類
スプールとは、道糸(ライン)を巻き取っておくパーツで、リールの使い方に応じて幾つかにタイプに分かれます。
一例としていくつか紹介しましょう。
左は深溝タイプと呼ばれるスプールで、ナイロン糸などの太糸を巻いて使用するのが一般的です。
深溝タイプに対し、中央は浅溝タイプと呼ばれるもので、PEラインなどの細糸を巻いて使用する仕様になっています。
スプールの溝の深さは全く異なりますが、巻き取るラインの径が違うので、同じ長さのラインを巻き取ることが出来ます。
近年、PEラインの製造技術の向上と、価格の低下により、PEラインはごくごく普通に使用されるようになり、いずれのタイプのスプールも一般的なものとなりました。
右のスプールは、投げ釣り用のリールの浅溝スプールですが、遠投性能を追究した形状(浅溝、テーパー、エッジ角度)に製造されているのが確認できます。
なお、スプールについては、巻き取るラインの長さと、ラインの強度(太さ)によって必要な大きさが変わり、使われる素材や製造技術によって重さや性能が変わります。
ただし、基本的にリールの性能と型番によって標準スプールは決まっています。
初心者~中級者までの間は、リールの性能に合わせた付属のスプールを使用すれば良く、深く考える必要はないでしょう。
ハンドルとハンドルノブについて
もう一点、外観から違いが分かるパーツにハンドルと、ハンドルノブがあります。
まず、スピニングリールのハンドルは大きく分けて2種類に分かれます。
一般的なハンドルは左のシングルハンドルになり、ほとんどのスピニングリールには、シングルハンドルが付いています。
シングルハンドルは素早く巻き始める、止めるといった基本操作が行いやすい反面、ハンドルのバランス上、一定の巻きの速度を維持することが難しい構造です。
すなわち、巻きの操作で下から上への巻き上げは純粋に手の力加減ですが、上から下への押し下げはノブの重量も加わるので、速くなりやすいという特徴があります。
対して右はダブルハンドルと呼ばれるもので、ハンドルのバランス上、ノブの重量で余計な力が加わることがなく、巻きの速度を一定にしやすい構造になっています。
ただし、デメリットとして、シングルハンドルに比べて重いので、リールの自重を上げる要因となってしまいます。
ハンドルに拘りのない入門者や初心者のうちは、より汎用性の高いシングルハンドルを選択する方が良いでしょう。
なお、他にも扱い易さを含めたメリット・デメリットだけでなく、カスタム製品では、ハンドルの素材や長さにまで拘った製品もあります。
さらに、リールのハンドルのノブの形状には上図のような種類があります。
シーバスフィッシングで使うルアー
- パドル型:指先操作の標準型
- T型:指先操作と握りを変えるパワフル操作の両用
- I型:指先での繊細な操作が可能なパドル型
- ラウンド型:パワフル操作の特化型
ハンドルノブの形状は、それぞれの特徴を活かしたメリットとデメリットがありますが、一般的には購入するリールの仕様にあった、標準的なものがセットされています。
基本的なタイプは同じでも、メーカーによってその形状は微妙に違っています。
細分化すると他にも多くの種類がありますが、この形状の違いに加えて、もう一点ノブの特徴を示すのが素材です。
一般的なEVAやラバー、プラスチックだけでなく、アルミやチタン、カーボン、更に天然木やコルクなど様々な素材が使われます。
ただ、これらはカスタムの拘りの世界になり、初心者向けの内容ではありませんので、ここでの紹介は控えたいと思います。
スピニングリールの性能(仕様)
次にリールの外観からだけでは分かりにくい、リールの性能(仕様)について紹介します。
先に紹介したものと一部重複するものもありますが、リール選びをする上で非常に重要な要素になります。
リールの糸巻き量(巻き糸量)
自分が使用する糸が必要な長さ巻き取れるかどうか、これはリールを選ぶ際の最も重要な要素になります。
スプールに巻くことができる釣り糸の長さを、糸巻き量や巻き糸量と呼びます。
糸巻量については仕様表はもちろん、リールのスプールにも記載されており、多くのリールではナイロンラインを巻いた場合の糸巻量と、PEラインを巻いた場合の糸巻量が、併記されています。
番手の大きなリールほど、付属のスプールも大きくなるので、糸巻量も大きくなりますが、一般的な波止釣りでは、100m~150mの糸巻量があれば、釣り方を問わず幅広く使えると言えます。
リールのギア比
ギア比とは、ハンドルを1回転させると、ローターが何回転するかという数値を指します。
同じサイズのリールを使用した場合、ギア比が大きいほど巻き上げのスピードは速くなりますが、パワーは小さくなります。
逆にいえば、ギア比が小さければ、巻上げのスピードは遅くなりますが、パワーは大きくなるということです。
すなわち、ギア比はリールの糸を巻く時のパワーとスピードのバランスを示す客観的な指標となります。
一般的な波止釣りでは、ギア比5.0前後が汎用性の高い仕様だと言えます。
リールの自重(g)
釣り方によっては、ロッドとリールは手持ちし続けるタックルであり、リールの自重も軽ければ軽いほど扱い易く、疲れも軽減できるメリットがあります。
マグネシウムやチタンなど、軽量のパーツが使用されている製品ほどリールの自重は軽くなりますが、それだけ高価になります。
リールの大きさにもよりますが、小型の2000番から中型の3000番程度のリールで、およそ200g~300g程度と考えておけば良いでしょう。
リールのドラグ力(kg)
ドラグ(耐力)については、前章で紹介しましたが、一定の負荷が掛かった際にラインを送り出す機能です。
汎用リールの実用ドラグとして2kg~4kg程度でOKですが、投げ釣りなど大きな負荷が掛かるリールであれば、10kg~20kgあるのが一般的です。
リールのベアリング
リールは回転性能が使いやすさに直結しますが、その大きな要因となるのがベアリングと呼ばれるパーツの性能と使用される数です。
ボール/ローラーベアリングは非常に高価なパーツであるため、その数が多ければ多いほど高額なリールになります。
安価なリールを選択する場合でも、1つか2つはベアリングが組み込まれている製品を選ぶ方が無難です。
スピニングリールの番手
スピニングリールには、番手と呼ばれるリールのサイズを示す指標があり、同じ番手のリールは大体が同じ仕様となっています。
ここでいう仕様と言うのは、先に紹介してきた糸巻き量やドラグ力を指します。
メーカーによって規格は多少変わりますが、リールを選ぶ際には、まずは必要な番手を明確にしておく必要があります。
以上で、スピニングリールの特徴と性能に関する紹介は終わりますが、これでリールの基本的な知識は持って頂けたかと思います。
対象魚や魚のサイズに対して専門性の高いロッドに比べると、リールは汎用性が高いタックルだと言えます。
スプールに巻く糸を変えることで、あるいはスプールそのものを交換することで、異なる釣り方への対応もある程度可能になります。
初心者さんが最初のリールを選ぶ際には、2500番か3000番の汎用性の高いスピニングリールをお勧めします。
ここではスピニングリールに焦点を当てて紹介しましたが、他のリールの種類(両軸受リールや片軸受リール)についても、機会があれば紹介しようと思います。