釣り糸(ライン)は、釣果に影響を及ぼす最重要の道具の一つです。
釣り糸選びを行う際には、まず第一に素材の異なる釣り糸の中から、釣り糸の種類を決定しなければなりません。
これは、釣り糸の用途(道糸として使うのか、ハリスや仕掛け糸として使うのか)や、行う釣り方によって、どの種類の釣り糸を使えば良いかは概ね決まっています。
現在主流となっている釣り糸の素材は、ナイロン、PE(ポリエチレン)、フロロカーボン、ポリエステルと、これらを組み合わせた複合ラインで、この中から必要な釣り糸の種類を決定します。
次に、使う釣り糸の強度(強力)を決定する必要がありますが、これは釣り糸の太さを表す【号数】を決定するというのとほぼ同じ意味合いになります。
釣り糸はその性質上、ほとんどのケースで細い方が好ましいのですが、強いものを使おうと思えば、当然それだけ太くなります。
釣り糸の強度選びは、相反するメリットとデメリットが存在する中で、そのバランスを取ることが重要となります。
ここでは、釣り糸(ライン)の号数と太さ、強力(強度)の関係について詳しく解説し、さらに堤防釣りの釣り方で使用する釣り糸の号数についてもまとめて紹介します。
なお、釣り糸の素材の特徴や特性、釣り糸の種類の選び方については別記事で紹介しています。
釣り糸の種類選びの段階で迷っている方は、以下の記事から先に目を通してもらった方がお役に立てるかもしれません。
釣り糸(ライン)の号数と太さ、強力(強度)の関係
現在販売されている釣り糸の多くは、釣り糸の太さを示す号数を中心とした表示で販売されています。
ところが本来、釣り糸を選ぶ時にはその強さを表す強力の情報が必要であり、釣り糸の種類が異なれば同じ強力でも異なる太さとなる号数で販売するのは適切ではありません。
最近では、号数の表示だけでなく、強力(lb:ポンド)を前面に出したり、併記して販売される製品も増えましたが、規格化されたこの号数はすでに慣れ親しまれたもので、これから先も釣り糸選びの中心的な情報であり続けるでしょう。
それゆえ、我々釣り人は、太さを示す号数と、強度を示す強力の関係をある程度把握しておく必要があります。
まずは、号数という規格について、紹介するところから始めましょう。
釣り糸(ライン)の号数と太さ、そして重さの関係
釣り糸の号数は、合成繊維で開発されたナイロンラインの登場とともに規格化されました。
釣り糸の太さと号数は単なる比例関係ではなく、ここへ釣り糸の重さ(重量)という要素を加えることで、号数と強力の関係にある程度の比例関係を成立させています。
少しややこしい話しで、以下の内容は知っていなくても全く問題のないことなので、細かいことに興味がない方は、読み飛ばしてもらって結論だけ確認してもらえば良いかと思います。
ナイロンラインの開発直後の話になりますが、釣り糸の断面は完全な真円ではなく、太いところもあれば細いところもあるのが一般的でした。
そこで標準直径という規格を設定しますが、結論だけ伝えるとあるナイロン糸で5尺(1ヒロ:約150cm)の重さが1厘(0.0375g)あり、この時の直径が0.165mmありました。
そこで、この直径0.165mmを1号と定めたものを標準直径とし、現在もなおこの規格が使用されています。
理系の方なら理解が早いかも知れませんが、標準直径とは「重さ(体積)をもとに算出された平均の太さ」によって規格化されており、釣り糸の号数は直径と比例関係にならず、一定長さ当たりの重さと比例関係になっています。
ラインの太さを計算する方法として、簡単な具体例を示してみましょう。
ナイロンライン1号
ナイロンライン1.5mの重さが0.0375gなので、100mの重さは2.5gになります。
標準直径として、ナイロン1号の平均太さは0.165mmと決まっているので、体積は3.14×0.165×0.165×100×1,000=8,548.65(立方mm)となります。
ナイロンライン10号
号数は重さと比例関係にあるので、10号の100mの重さは1号の10倍の25gであり、更に体積も10倍になるので85,486.5(立方mm)あります。
平均太さは計算によって求まり、(85,486.5÷3.14÷100÷1,000)の平方根=0.522mmとなります。
結果をご覧頂けば分かりますが、号数が10倍になっても、太さは3倍程度にしかなっていません。
ただし、号数が10倍になることで重さは10倍になり、結果としてラインの強さを示す強力については10倍程度となります。
これは先にお伝えしたように、釣り糸の号数と強度に、ある程度の比例関係をもたらされているということです。
上記ではナイロンラインを一例を取り上げて解説しましたが、実はナイロンラインに、フロロカーボンラインとポリエステルラインを加えたこれら3種類の糸には、一般社団法人日本釣用品工業会(JAFTMA)から釣用品の標準規格(JAFS)として、標準直径が定められています。
釣り糸を製造販売する国内主要メーカーのほとんどは、この規格を取り入れているので、号数と太さの関係は、この数値を基本として考えれば良いでしょう。
なお、PEラインについては、標準直径は定められておらず、号数と重さによって太さの標準規格(デニール;d)が定められています。
単位はいくつかありますが、一般的に用いられているのは9,000mあたりの重さ(g)を示すデニール(d)で、太いものほど重くなるという具合に、釣り糸の太さを表す単位として用いられています。
釣り糸(ライン)の強力と強度の違い
釣り糸の強さには、強力と強度という2つの表現方法が存在します。
強さなので強度が一般的な表現のように思いますが、我々が一般的に認識している強さにあたるのは強力の方です。
釣り糸を購入する際、パッケージに強さを表すのにポンド(lb)やキログラム(kg)テストの数値が表示されているのを見かけますが、これがまさに強力です。
強力(引っ張り強力)というのは、ラインの両端を引っ張って切れた時の荷重の重さのことを示しており、20lbsの荷重で切れたのなら、その糸の強力は20lbsということになります。
もう少し分かりやすくお伝えすると、前項で少し紹介しましたが、釣り糸の太さには太い部分と細い部分のムラがあります。
すべての部分が同じ強力というわけではないので、概ねどの程度の荷重まで耐えられるかの数値を示すものと認識しておけば良いでしょう。
この規格は、国際釣魚協会(I.G.F.A.)のルールに則った表示に準じたもので、国産の釣り糸に対しては概ねI.G.F.A.規格が適用されています。
なお、強力はlb(ポンド)やkg(キログラム)の単位で表示されますが、1lbは0.45kgということを覚えておけば、いずれの表記であっても換算するのは難しくありません。
そして、あまり聞き慣れない情報となりますが、一応釣り糸の強度についても説明しておきます。
釣り糸の強力を一定長さ当たりの重さで割ったものが強度で、強いものほど数値が大きくなります。
強度はラインの素材それぞれの強さを示したものと考えてもらえば結構で、ナイロンとフロロカーボンは同等、ポリエステルは強弱あり、PEラインはかなり強いという結果となります。
先程出てきた9,000mあたりの重さ(g)を表すデニールを取り上げて、一例としてナイロンラインの1号と5号の強度、そしてナイロンラインとPEラインの強度を比較してみます。
ナイロンライン1号
ナイロンライン1号の強力は4lbs(1.8kg)で、1.5mの重さが0.0375gなので、9,000mの重さは225g=225dになります。
この場合の強度は、1,800÷225=8(g/d)
ナイロンライン5号
ナイロンライン5号の強力は20lbs(9kg)で、1.5mの重さが0.0375gなので、9,000mの重さは1,125g=1,125dになります。
この場合の強度は、9,000÷1,125=8(g/d)で、同じ素材なので同じ結果になりますね。
PEライン5号
あるPEライン5号の強力が80LB(36kg)で標準規格の1,000dで製造されたものだった場合の強度は、36,000÷1,000=36(g/d)になります(何号で計算しても結果は同じです)。
上記のナイロンラインのおよそ4倍程度の強度という結果になりましたが、国産メーカーのPEラインであれば、この程度が一般的です。
ココに注意
ただし、PEラインの場合は、安価な製品ほど同じ太さでも強力値が低く、強度が弱いものが多いので、この点には注意が必要です。
ラインの号数と強力のまとめ
ラインの太さを表す号数、強さを表す強力と強度について、ある程度理解頂けたでしょうか。
それでは、主要なライン素材であるナイロン・フロロカーボン、ポリエステル及びポリエチレン(PE)について、強力、号数、そして標準直径について、一覧表で示してみましょう。
いずれのラインも有名国産メーカーが製造するラインの標準的なデータを示しています。
PEラインは製品によって強度が大きく異なる場合がありますが、国産メーカーのPEラインの場合は概ねナイロンラインの号数の1/3.5~1/4程度だと考えておけば良いでしょう。
それでは、もう一点最後に、堤防釣りの種類に応じた釣り糸のおすすめの種類と強度をまとめておきましょう。
堤防釣りの釣り方に適した釣り糸の種類と号数
海釣りの中でも、堤防釣りで楽しむことができる釣り方と対象魚に対し、それぞれに適した釣り糸の種類や号数について、管理人のお勧めとして纏めてみました。
号数には敢えて幅を持たせていないので中心値と考えてもらい、その前後くらいまでが許容幅と考えてもらえば結構かと思います。
メディアファイルとしてリンクさせているので、文字が小さくて見えないスマホユーザーでもクリックしてもらうと拡大して確認できます。
ダウンロードもできるので、初心者の方はポケットマニュアルとして是非ともお役立て下さい。
以上で、釣り糸の太さと号数、強力や強度に関する紹介を終わります。
ラインの特性を掘り下げれば、結節強力や伸縮性、使用環境や吸水性、劣化度合など、まだまだたくさんのファクターが存在します。
どのような釣りにおいても、より使用効果の高い釣り糸を準備しようと思えば、それなりにお金が掛かかります。
しかしながら、そこまで考えて自分の釣りに見合った製品を選び抜く方は、ごく一部のベテランさんだけです。
もしあなたが、これから釣りを始める入門者さんであったり、まだまだ始めたばかりの初心者さんなら、なるべく汎用的なラインと号数を用意することをおすすめします。
難しい話は抜きにして、エサ釣りなら道糸はナイロン3号、ハリスはフロロカーボン1.5号、ルアーフィッシングならラインはPE1号、リーダーはフロロカーボン2号で始めてみてはいかがでしょうか。
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