堤防釣りを続けている釣り人なら、誰もが一度は魅了される、波止の大物といえばなんと言っても【クロダイ(チヌ)】です。
北海道の一部を除く全国に分布し、シーズンを問わずに年中狙うことが出来るクロダイは、釣り達者なベテランさんから、まだ釣りを覚えたての初心者さんに至るまで、幅広く狙われる大人気のターゲットです。
クロダイは基本的には、専門の釣り方で狙わないと、釣るのが難しい魚です。
それにも関わらず、『サビキをしていたら釣れた』、『チョイ投げで掛かった』など、初心者さんでも不意に釣れることがあるほど、日常的に釣れる魚でもあります。
ここでは、クロダイ(チヌ)を狙って釣るために、習性や特徴を知ってもらった上で、釣れる時期や時間、また釣り場やポイントなどについて詳しく紹介します。
【クロダイ(チヌ)】
特徴と習性 ~釣れる時期・釣れる時間・釣れる場所~
まず始めに、クロダイ(チヌ)という魚の特徴と習性について紹介します。
その後、クロダイの習性を踏まえた上で、クロダイを釣るために関係が深い、クロダイが釣れる場所(ポイント)、釣れる時期、そして釣れる時間帯について確認してみましょう。
クロダイが釣れる釣り場・時期・時間は、それぞれ密接に関わり合い、例えば、時期が異なれば釣れる場所や時間も変わってきます。
本記事をご覧になる方の釣行時の参考になるように、出来るだけ具体的なケースを記載しながら紹介してみます。
これに合わせて、様々なクロダイの釣り方の種類についても紹介したいところですが、記事が長くなりすぎるので、これらについては別途、釣り方の種類をまとめた記事として紹介します。
クロダイ(黒鯛)の特徴
クロダイ(黒鯛)は、北海道の南部以南の日本全国に分布するタイ科の魚で、岩礁から砂泥底まで幅広く生息し、防波堤釣りの対象魚としては、最も人気の高い魚の一つです。
地方によって呼び名は様々ありますが、管理人が住む関西では『チヌ』と呼ばれ、大阪湾は『茅渟の海(チヌの海)』と言われるほど、どこの釣り場でもクロダイが釣れます。
最大サイズは70cmにも及びますが、一般的な防波堤釣りで釣れるのは40cm程度までが多く、50cm以上に成長するには10年以上を要することから『年無し』、60cmを超えると『ロクマル』など特別な呼び名もあります。
逆に30cmまでのサイズは、『チンチン』や『カイズ』と呼びます。
因みにクロダイは性転換する魚なので生後2年間は全てがオス、2~3歳の間はほとんどが両性状態となり、そして4歳以降はほとんどがメスに変わっているので、大物はほぼメスということになります。
見た目は典型的な鯛と同じ体型で、背側と鰭膜は黒色か灰色で、腹側(下顎から胸まで)が白いのが一般的な体色です。
なお、体表は深場にいるものほど銀白色に近く縦縞が入り、普段日光を浴びている浅場のものや、大型のチヌほど黒っぽくなります。
クロダイの近縁種に『キチヌ』と呼ばれるものがおり、腹びれ・尻びれ・尾びれが黄色いので、『キビレ』とか『キビレチヌ』などとも呼ばれてます。
キチヌはクロダイよりも汽水域を好みますが、気水域でもクロダイは普通に釣れるので、河口での釣果は釣り場や、その時々で傾向が変わります。
夏に旬をむかえる白身のクロダイは、タイにも引けを取らない食味とされていますが、住んでいる環境次第では少し臭みがある場合もあります。
クロダイは沿岸域に棲む周年狙える魚ですが、どんなものでも口にする悪食といった面もあり、それ故、様々な釣り方が楽しめる獲物です。
海釣りの初心者でも偶然ヒットさせる機会が多い魚ですが、堤防釣りにおいて、この魚に魅了される釣り人は後を立ちません。
波止釣りで最も手軽に狙える、大物ターゲットと言っても良いでしょう。
クロダイ(黒鯛)の習性
クロダイは、毎年春になると産卵(キビレは秋に産卵)のために浅瀬に上がり、積極的に捕食を行いますが、このタイミングを『ノッコミ(乗っ込み)』と呼びます。
ノッコミは大型のクロダイが出やすい時期で、一年の内で最もクロダイ釣りが盛り上がるシーズンとも言えます。
暖かい時期ほど浅瀬に上がり、水温が下がると深みへ入るのは他の魚と同じですが、クロダイはタイ科にしては珍しく沿岸域に生息する魚なので、ある程度水深のある釣り場であれば、一年を通して居着きのものを釣ることが出来ます。
また、河口の汽水域にもよく進入する魚(汽水域に入るとキビレの比率が上がります)で、意外と河川の淡水域まで遡上することもあり、川釣りをしていて釣れることもあります。
食性としては、幼魚は砂底のゴカイやイソメなどの多毛類(虫エサ)やスナモグリをあさり、大きくなるとエビやカニの甲殻類、波止際に付いた貝類、その他小魚など、様々な小動物を捕食します。
興味を引かれたものなら、どんなものも口にする悪食で知られ、釣りエサでよく使われるコーンやサナギ、場所によってはスイカを使って釣る地方もあるほどです。
ただ、それほど大胆な魚であるにも関わらず、実はかなりの臆病者で、音や光、人の気配には敏感で、非常に警戒心が高い魚としても知られています。
それゆえ、ダンゴを使って水中に濁りで煙幕を張ってやる紀州釣りやバクダン釣り、カセ・筏釣りなど、警戒を緩める効果を持つ独特の釣り方で狙われることが多い魚です。
また、日中は警戒心が強いチヌも、夜には警戒心が緩み、波止際などの浅瀬に上がってきやすいことから、夜釣りの電気ウキ釣りも有力な釣法の一つです。
チヌは1匹で行動することは少なく、2匹~4匹程度で行動することが多い魚と言われており、実際に1匹釣れた後に、同じポイントで連続して釣れることは珍しくありません。
それではクロダイの習性のうち、釣りに関与が深い点を、より詳細に見ていきましょう。
クロダイ(チヌ)が釣れる釣り場とポイント
クロダイは同じ場所に定着しているわけではなく、普段は海底の砂場を徘徊しており、一般的な防波堤であれば何処でも釣れると言ってよいほど手軽に狙える魚です。
大都会の港湾部でも普通に狙える魚なので、釣り場についてはそれほど拘る必要がなく、良く知った釣り場の中で自分なりのポイントを見つけるといった方が釣果に恵まれるでしょう。
それでは、一般的な堤防釣りでクロダイが釣れるポイントをもう少し詳しく確認してみましょう。
【波止先端部】
通常、海釣りでは潮通しの良い波止の外向きを狙うのが有利ですが、クロダイは潮の流れさえあれば、内向きの静かな釣り場でも十分勝負になります。
ただし、潮の流れに加えて、水深がある場所の方が魚影は濃いので、波止であれば、やはり先端付近が好ポイントになると言えます。
【沖向きテトラ】
防波堤や護岸の沖向きには、テトラポッドと呼ばれる消波ブロックが入っているケースが多いですが、ここはやはり好ポイントとなります。
潮通しの良い場所では、テトラ帯の全体がポイントになりますが、その中でもテトラの切れ目やコーナーになっている場所は、複雑な潮の変化を生み出し、一級ポイントになりやすい場所です。
その他でも、整然と組み上げられた場所ではなく、一部飛び出していたり、崩れてしまっているような変化があるような場所を狙いましょう。
【港内コーナー】
港内の比較的穏やかな場所で狙うのであれば、コーナー付近やケーソンブロックがズレていたり、隙間が広く空いている場所が潮の流れに変化が生じるポイントになります。
エサとなる小魚や岩ガニなどのエサが豊富な場所、特にイガイが付いているような場所であれば波止際でもクロダイは寄ります。
逆に浮遊するゴミも流れないような場所では期待薄なので、波止際での釣りは諦めて波止から少し離れた捨て石と砂底の掛け上がり付近を狙う方が良いでしょう。
【河口部】
すでに紹介しましたが、汽水域の河口部は良いポイントになります。
濁りの入りやすい場所ということもあり、比較的クロダイの警戒心が緩むポイントです。
ただし、ある程度上流域で狙うのであれば、潮の流入が期待できる満ち潮のタイミングを狙うのが良いでしょう。
似たような釣り場で、河口とは違って運河がありますが、浅場(シャロー)のルアーフィッシングで狙うのであれば、運河は超お勧めのポイントになります。
水深が1m程しかないような浅場でも、マズメ時と夜釣りの限定であれば、十分な釣果が期待できます。
【石積みの波止】
上図で示した石積みの波止は、河口部に近く磯にも隣接した釣り場になっており、このような場所は一級ポイントになります。
特に乗っ込みの時期などは磯際に近いポイントが良く、大型のチヌが期待できるポイントです。
【スリットケーソン】
護岸を形成するケーソンブロックの中には、内部に海水が出入りする構造になったものがあり、これをスリットケーソンと呼びます。
ただの壁とは違って波止にあたる潮流に変化が生じ、エサも豊富なこともあって、スリット内部にはクロダイをはじめ様々な魚が住み着いています。
普段人が寄りつかないような場所であれば、日中でも波止際で狙える超一級ポイントになります。
【沖提(一文字)】
沖堤(沖の一文字)は、水深も十分にある潮の流れの良い釣り場で、特に釣り場に拘る必要はなく、風の影響などを考慮して、釣りやすい場所を選ぶ方が良いでしょう。
磯場のない都会では乗っ込みが最初にスタートする場所といっても良く、場所によってはまだ厳冬期の時点から大物が数上がる釣り場もあります。
先に記載したようにクロダイが狙える釣り場は、釣りを行う時期や時間によって変化します。
更にいうと、狙う棚や釣り方(具体的には、浮かせて釣るか底を釣るか)によっても変わってきます。
ここでは、すべてについて記載しきれませんので、詳細は釣り方別の記事を作成して紹介していきたいと思います。
クロダイ(チヌ)がよく釣れる時期(シーズン)
どのような魚でも、時期(シーズン)は地域によって多少ズレが生じます。
ここでは、管理人が住む関西地方を中心としたシーズンの紹介になりますので、その点ご認識下さい。
もうすでに紹介しましたが、波止釣りのクロダイは、一年を通して(周年)釣れる魚です。
クロダイが捕食活動を行う適水温は10℃~30℃で、堤防釣りの対象魚としては、最も幅広い水温への適性を有します。
更にいえば、浅場の水温が15℃~25℃くらいが最適温となり、10m深度までを考えれば、春の終わりの5月頃から初冬の12月一杯あたりがこの水温に該当します。
クロダイが釣れる時期を水温との兼ね合いで確認すれば、いかに良い条件の釣期が長く続くのかということが理解できます。
そして、逆に10℃を切ってくると厳しくなり、ある程度の深場でないと釣果は期待薄になりますが、大阪湾を具体的な例に上げると、海水温は気温から少し遅れて変化してくるので、1月下旬から3月上旬の厳冬期のみが難しい釣りになるということです。
ココがポイント
水温は重要なファクターなので、ご自身の地域について調べてみましょう。
なお、良型サイズが最も期待できるシーズンは3月中旬~4月の春の乗っ込みの時期ですが、この時期は通常の波止よりも、岩礁帯の多い磯や、磯が隣接するポイントの方が期待できます。
漁港内などを含め、一般的な堤防での数釣りを楽しむのであれば、活性の高い7月~11月頃が狙い目となります。
ただし、夏から秋口にかけてはチヌの活性が高まるのと同様に、エサ取りが多い時期にもなります。
こうなると、ウキフカセ釣りなどよりも、紀州釣りや落とし込み釣り(ヘチ釣り)など、クロダイ専門の釣り方の本領が発揮される時期です。
あと、普段水が澄んでいるような釣り場では、雨の多い6月から7月の梅雨時期に、濁りが入って爆釣するといったケースもあります。
水温の高い夏季は浅瀬の堤防や河口、運河などでも良く釣れますが、水温が低い冬季はある程度水深のある波止で狙う方が効果的だと認識しておきましょう。
クロダイ(チヌ)が狙える時間帯
クロダイは一般的に薄明薄暮の魚だと言われており、夜明け前後と日没前後のマズメ時が一番良く釣れる時間帯です。
ただ、これは釣りをしていると大半の魚に当てはまることで、特に強調すべきものではありません。
一言加えておくと、薄明時と薄暮時には、テトラの掛け上がり、穴の中などかなりの浅場でもエサを食い漁るようになり、日中には非常に警戒心が高い大物も、大胆な行動を取りやすくなります。
ただ、クロダイは時間に応じて回遊しているわけではないので、あまり深く時間帯を気にする対象魚ではありません。
もちろん朝夕のマズメ時には一時的に活性は上がりますが、釣り方次第では日中でも普通に釣ることが出来る魚でもあります。
ただし、潮が完全に止まる時間帯は、活性が落ちるだけでなく、警戒心も高くなるので、釣果は確実に落ちます。
日中のクロダイは少し沖目の底付近を回遊していたり、波止際なら沈みテトラの切れ目付近にいますので、棚は深めに設定して狙うのが良いでしょう。
ちなみに、ダンゴ釣りのような、もともと底を狙った釣りなら、少し沖目に遠投し、深場を狙う方が効果的です。
そして、日が沈むにつれて、テトラや波止際に沿って浅場まで上がってきますので、それに合わせて棚は浅く狙います。
また、クロダイは半夜釣りや夜釣りでも釣果が期待でき、この時間にヒットする獲物は大型が多いのが特長です。
ブッコミ釣りなど底を狙うことも出来れば、波止際に付いたイガイの層を狙うこともでき、夜釣りでは幅広い棚で狙うことが可能です。
クロダイには夜間は何時頃までしか釣れないという縛りもなく、潮の動きに合わせて一晩中釣果は期待できます。
以上で、クロダイ(チヌ)の特徴と習性の紹介を含めた、釣れる場所とポイント、釣れる時期、釣れる時間帯の紹介を終わります。
もちろん得られる釣果は釣り方の種類にもよるので、一概にこれだけで釣れる釣れないとは言えませんが、チヌ釣りの基本的な知識の一端として覚えておいてもらえれば幸いです。
【追記】クロダイの様々な釣り方の種類についての紹介記事を作成しました。