海釣りの中には大きく分けて2種類の釣り方があります。
魚が口にする生きたエサや人工のエサを使ったエサ釣りと呼ばれるものと、疑似餌を使用するルアーフィッシングと呼ばれるものです。
いずれの釣り方も、メリットとデメリットが存在し優劣付けがたく、それぞれ多様性があり、そしてそれぞれの面白さがあります。
海釣りの中でも一般的な堤防で行うエサ釣りには、『波止釣りの三大釣法』と呼ばれるエサ釣りの基本形があり、【ウキ釣り】、【探り釣り】、【投げ釣り】の3つがこれに該当します。
ここでは、一般的な防波堤でエサ釣りを行う際の釣り方の基本型と、三大釣法に分類される釣り方の種類について紹介します。
これから海釣りを始めようと思っている入門者さんや、始めたばかりの初心者さんは是非とも最後までご覧いただければと思います。
波止釣りの三大釣法(ウキ釣り、探り釣り、投げ釣り)に分類されるエサ釣りの種類
海釣りの中で、もっとも多くの釣り人が楽しむ堤防釣りには、ターゲットの種類をはるかに超えるほど多くの釣り方が存在します。
例えば、波止釣りの大物として人気のチヌ(クロダイ)をエサ釣りで狙う場合は、以下のような種類の釣り方が有名です。
堤防釣りのチヌの代表的な釣り方
- フカセ釣り
- 紀州釣り
- エビ撒き釣り
- 落とし込み釣り(ヘチ釣り)
- ぶっこみ釣り
ここで取り上げた釣り方以外にもチヌの釣り方はありますが、1つのターゲットを釣るにもこれだけの種類が存在し、仕掛けの違いまで考えれば、個々の釣り人が行う釣り方は無数に存在すると言えます。
一言でエサ釣りとは言っても、その釣り方は多種多様で、釣り人は釣り場や釣行時期、釣り方の難易度など様々な要素を考慮にして、その日の釣り方を選択することになります。
波止釣りでは、これだけ様々な釣り方が存在するのですが、その大元を突き詰めると、波止の三大釣法と呼ばれる3つの釣り方に収束します。
実は上記のチヌの釣り方の5種類も、この三大釣法に分類することが出来ます。
それでは、三大釣法の特徴と釣り方の種類について紹介していきましょう。
目で見て魚のアタリを見極める【ウキ釣り】
まず1つ目は、総称として【ウキ釣り】と呼ばれる釣り方です。
ウキ釣りの最大の特徴は、その名の通り魚のアタリをウキの変化から読み取る、すなわち目で見て釣る釣り(視覚で判断する釣り)という点です。
ウキ釣りはエサを潮の流れに乗せて、自然なエサの流れを演出する釣りになりますが、実は三大釣法の中では最も難しい釣りだと言えます。
その最大の理由は、ウキ釣りは基本的にマキ餌を使って自分でポイントを作り上げ、そのマキエに付けエサを同調させて釣るという作業が必要になるからです。
マキエも何もないところ、しかも魚のいない層で、いくら餌を流しても、狙ったターゲットにエサを発見してもらえなければ釣りになりません。
また、発見されても、食い付いてもらわなければ、これまた釣りになりません。
難しいが故に、その仕掛けには繊細さと様々な工夫が盛り込まれ、魚を寄せるマキエも驚く程に多種多様です。
ただし、ウキ釣りで釣れる魚種はことのほか多く、非常に面白い釣りなので、波止釣りを行うのであれば、1つ2つは是非身に付けて欲しいと思います。
以下にウキ釣りの種類を示し、簡単な説明を加えておきます。
ウキ釣り(電気ウキ釣り)
特にターゲットを絞らない五目釣りを目的とする【ウキ釣り】で、マキエはアミエビなどの集魚力の高いものを使用しますが、どうしてもエサ取りの釣果が多くなります。
仕掛けの繊細さは問わない釣り方ですので、ウキ釣りの中では初心者向きの釣りだと言えます。
夜釣りでは電気ウキという光るウキ(発光ウキ)を使いますが、青イソメなどの虫エサを使ってウキ流しを行うだけで、警戒心が薄れたチヌやハネなどの大物を狙うことが出来ます。
なお、夜釣りの場合は、特にマキエを必要としない場合が多くなり、回遊性の魚であるタチウオを狙う場合も、電気ウキ仕掛けを沖合にキャスティングして流しておくだけになります。
ウキフカセ釣り(フカセ釣り)
チヌやグレなどの上物と呼ばれる魚をターゲットにする【ウキフカセ釣り】(単に、フカセ釣りとも呼びます)ですが、最小限のオモリしか使わない負荷の軽い繊細な仕掛けを用いてエサを流す釣りで、細やかなマキエワークが必要になります。
ある程度の海釣り経験者でないと、難しい釣りですので、入門者や初心者向きではありません。
エビ撒き釣り
ウキ釣りで行う【エビ撒き釣り】では、主にハネやチヌ、メバルなどをターゲットにしますが、ここで使うエビはシラサエビやブツエビといった活き餌です。
マキエも同じ活きエビを使い、比較的広い範囲にマキエの効果がありますので、マキエと同じポイントへ直接活きエビを流してやれば、それほど潮の流れは気にしなくて良い釣りです。
ウキ仕掛けとしては、比較的重めのオモリを打ちますので、マキエさえしっかり継続的に行えば、大物の釣果も得やすい釣りです。
ただし、撒き餌にも刺しエサにも使う活きエビは、地域によっては非常に高価なエサになるため、金銭的に試せないケースも多いでしょう。
紀州釣り
チヌ釣りに特化した【紀州釣り】は、ヌカダンゴを使って付けエサを包み込み、ダンゴを同じポイントへ投げ続けてターゲットを寄せる釣りです。
ヌカダンゴにはエサ取りから付けエサを守るという効果と、ヌカの煙幕によってチヌの警戒心を下げるという効果もあります。
ウキ釣りであっても、エサは海底を流す釣りになり、細やかな棚取りとダンゴワークのテクニックが必須であることから、ウキフカセと同様に難易度の高い釣りだと言えます。
ヌカ切り
エサ取りの多い場所でグレを狙う場合に良く使われるウキ釣りで、紀州釣りのダンゴと同じ類のものを使いますが、【ヌカ切り】ではダンゴが沈んでいく最中にエサがダンゴから飛び出すように調整します。
エサ取りは集魚剤が効いたダンゴを追いかけて海底へ引き寄せられるので、エサ取りを躱しつつ、中層に残ったエサで上物を狙うといった釣りになります。
カゴ釣り(遠投カゴ釣り)
ウキ釣りの多くは、オモリが軽い仕掛けが多いのですが、【カゴ釣り】では10号程度のオモリがついたロケットカゴという道具にコマセを詰め込み、数十m遠投して沖の獲物を狙います。
もちろん同じようなポイントに投入を続けるので、ウキ釣り特有の魚を寄せ集める釣りにはなりますが、上記のウキ釣りに比べると、付けエサのすぐ上のカゴからマキエされながら釣るような釣りですので、マキエと付けエサの同調は気にする必要がなく、遠投ゆえのキャスティングずれが生じても、比較的広範囲に狙えるようになっています。
この釣りで狙うターゲットは、マダイや30cmオーバーのアジなど、大物の釣果が期待できます。
手元に伝わるアタリを捉える【探り釣り】
次に取り上げるのは、もっともシンプルな釣り方でもある【探り釣り】と呼ばれる釣り方です。
探り釣りの最大の特徴は、その名のとおり、ターゲットとなる魚を探り歩きながら釣り上げることにあります。
先に紹介したウキ釣りが、ターゲットをマキエサで釣り人のテリトリーへ呼び集めるのに対して、探り釣りでは自分からターゲットのいる場所へ出向くという、対称的な特徴があります。
この釣りの主なターゲットは、自分の縄張りからあまり動かないロックフィッシュ(根魚)や、波止際でエサをあさるチヌなどとなります。
魚のいる場所を探すので、基本的にマキエは使わず、探り釣りでは、エサを潮に流すような釣り方は行いません(一部、軽い仕掛けを流す探り釣りもあります)。
そして、もう一つの特徴は、魚のアタリがダイレクトに竿先を通して手元に届き、自身の感覚が釣果を左右する要因(触覚で判断する釣り)となります。
ウキ釣りと違って仕掛も釣り方もシンプルなので、その釣りの多くは入門者や初心者にも向いた釣り方です。
ココがポイント
以下に探り釣りの種類を示し、簡単な説明を加えておきます。
際釣り
主に胴突き仕掛けを使って、波止際に仕掛けを落とし、海底の捨て石近辺から中層にかけて探る釣り方を【際釣り】と言います。
魚のアタリがなければ波止際を少しづつ移動しながら釣ります。
縦に誘いながらの釣りで、魚のアタリは直接手元に伝わり、シンプルな釣法なので初心者にも向いた釣りだと言えます。
その反面、魚も違和感を感じやすいので、繊細な魚を釣るのは難しくなります。
脈釣り
底オモリの胴突き仕掛けではなく、釣り針より少し上にオモリを配置した仕掛けを使い、ロッドの長さの範囲を幅広く探っていく釣り方を【脈釣り】と言います。
際釣りと同じように縦に落としていく釣りなので、キャスティング(仕掛けを投げる操作)は必要としません。
仕掛けもオモリと釣り針だけのシンプルなものなので、海釣りの入門者でも取り組みやすい釣りだと言えます。
穴釣り
探り釣りの中で、最もロックフィッシュの釣果を得やすい釣りが【穴釣り】です。
穴釣りでは、敷石やテトラポッドの隙間から仕掛けを落としていける場所のことを『穴』と呼びますが、穴の中には根魚(ロックフィッシュ)と呼ばれる魚が潜んでいます。
特に主のターゲットとなるカサゴが多く、初心者でもシンプルな穴釣り仕掛けで簡単に釣果が得られます。
ただし、岩場の隙間に仕掛けを落としていく訳ですから、釣り針やオモリが根に引っ掛かる『根掛かり』という現象が多発するので、ある程度の仕掛けのロストは覚悟せねばなりません。
ココがおすすめ
ブラクリ釣り
『ブラクリ仕掛け』という根魚(ロックフィッシュ)をターゲットに絞った専用仕掛けを使った釣り方で【ブラクリ釣り】と呼ばれることがあります。
見た目や動きで目立たせて魚を探り誘うブラクリは、根掛かりを軽減させる効果や、穴の中へ落ちていきやすい構造をとるなど、様々な効果を合わせ持つ完成仕掛けです。
リールからの道糸とブラクリ仕掛けを結ぶだけで釣りが出来るので、入門者にも向いた釣法です。
釣り方そのものは、上記で紹介した【脈釣り】や【穴釣り】と同じ操作になります。
落とし込み釣り(ヘチ釣り)
【落とし込み釣り(ヘチ釣り)】は、岩ガニやイ貝をエサにして、波止際をほぼエサの重みだけで、ゆらゆらと落としていく釣りです。
ターゲットはチヌになり、ポイントを探り歩く釣りですが、アタリは手元ではなく、釣り糸(ライン)に付けた目印や、ラインの動きそのもので取ります。
探り釣りでありながら、視覚的にアタリを取るということで、ウキ釣りの要素と融合された釣りとも言えます。
そして、同じような釣り方で、波止際から少し離れた場所を探ること落とし込みを【前打ち】と言います。
落とし込み釣り(ヘチ釣り)や前打ちは、この釣りに適した専用のタックルも必要となり、初心者には少し難易度の高い釣りだと言えます。
沖の海底に住む底物を引き寄せる【投げ釣り】
三大釣法の最後は、【投げ釣り】と呼ばれる釣り方です。
投げ釣りは、15号~30号程度の投げ釣り専用の天秤オモリに、2本~4本の釣り針に刺した虫エサを遠投して、沖にいるキスやカレイなどの底物を釣る釣り方です。
海釣りでは、砂浜からの釣りがメインとなりますが、底が砂地であれば防波堤からでも行うことができます。
もちろん底が岩場のポイントでアイナメなどを狙って投げ釣りを行う場合もありますが、この場合は根掛かりのリスクが増えますので、1本針で行うことが多くなります。
遠投なのか近投なのか、釣り場所となるポイントの違い、また、狙う獲物の種類などによって、投げ釣りは以下のように分類されます。
投げ釣り
一般的な【投げ釣り】は海底が砂場の場所で、先に紹介した投げ釣り専用の仕掛けを使ってキスやカレイを狙う釣り方です。
上の写真で分かるように、三脚と呼ばれる竿掛けに、2本あるいは3本の竿を置き竿し、竿ごとに投げる距離を変えてターゲットのいる場所を探ります。
魚のアタリは竿先の反応を目で見て判断し、魚がエサをある程度食い込んだのが確認できてから仕掛けを引いてくる、向う合わせという釣りのスタイルが一般的です。
始めるにあたってそれなりのタックルが必要になりますが、入門者や初心者でも十分取り組める釣り方です。
ブッコミ釣り
岩場やシモリ周りを狙う投げ釣りの場合は、比較的近投での釣りになり、チヌやスズキなどの大物、アイナメなどのロックフィッシュを狙うケースが多く、【ぶっこみ釣り】と呼ばれます。
複数の針では根掛かりのリスクも高くなるので、ぶっこみ釣りでは基本的に1本針で臨みます。
獲物の特性上、夜釣りで行うことが多いのも、この釣りの特徴だと言えます。
チョイ投げ釣り
波止のすぐ近辺に仕掛けを投げ入れ、砂地、岩場を問わず、比較的軽い仕掛けで底を探るように釣る釣り方を【チョイ投げ】と言います。
オモリ負荷も小さく、獲物を問わず波止近辺に生息する魚を狙うこの釣りでは、重厚な投げ釣りタックルを必要とせず、置き竿をせずに手持ちで行うことが出来ます。
汎用的なタックルで十分釣りが可能なので、初心者向きの釣り方とも言えます。
引き釣り
上記で紹介した投げ釣りやチョイ投げを行う際に、仕掛けを引きずって誘いを掛けたり、ポイントを移動させたりしながら釣る釣りを【引き釣り】といいます。
引き釣りもロッドが手持ちになるので、比較的軽量のタックルを使うケースが多く、引き釣りを行う場合のアタリは、手元の間隔で捉えることになり、投げ釣りと探り釣りの要素が融合された釣りだと言えます。
ターゲットとなる獲物は、砂地に生息する獲物全般になります。
堤防で行うエサ釣りにおける、『波止釣りの三大釣法』と、三大釣法に分類される釣り方の種類については、おおよそ上記で示した通りです。
ただ、三大釣法以外にも実は他にもまだまだ釣り方の種類はあって、しかも現在波止釣りのメインとなる釣り方さえ、上記には出てきていません。
写真で示したのは、【投げサビキ釣り】と呼ばれる波止釣りでよく行われる、アジを狙った人気の釣り方です。
疑似餌を使うがルアーフィッシングには分類されず、かと言って単純なウキ釣りにも分類されない。
このように、いくつかの要素を融合した仕掛けや釣り方も多く存在します。
先に紹介した【落とし込み釣り(ヘチ釣り)】は探り釣りとウキ釣りの融合、【引き釣り】は投げ釣りと探り釣りを融合した釣りとなっていましたね。
次回はこういった、単純に三大釣法には分類されない釣り方についても紹介していきます。
三大釣法には分類されない釣り方については、コチラをどうぞ
三大釣法に含まれる釣り方の中から、初心者向けの仕掛けについて紹介しています。